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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(あ)3065号 判決

本籍

山口県大津郡菱海村大字河原一一〇四番地

住居

大分市新中島南二五号

蒲鉾工場職人兼配達人

松山一義

昭和七年一月一三日生

右の者に対する賍物運搬、賍物故買被告事件について昭和二六年四月二四日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し、福岡高等検察庁検事長山井浩から、上告事件受理の申立があり、当裁判所はこれを受理したので次のとおり判決する。

主文

原判決を破棄する。

被告人を六月以上一年以下の懲役及び罰金弐千円に処する。

原審及び当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

福岡高等検察庁検事長山井浩の上告受理申立理由は末尾添付別紙記載のとおりである。

被告人は昭和七年一月一三日生であつて、本件第一審判決当時(昭和二五年一二月一日)には少年法六八条一項により「成人」であつたのであるが、本件が原審に係属中同条所定の期間が経過した結果、原判決当時(昭和二六年四月二四日)においては同法第二条所定の「少年」となつたことは記録上明白である。原審は、本件第一審判決に影響を及ぼすこと明白な法令の適用の過誤があることを理由として、同判決を破棄した上刑訴四〇〇条但書に従つて自判したものであるが、新刑訴法における控訴審であつても第一審判決を破棄して自判する場合には、その自判する時期を基準として被告人に少年法を適用すべきや否やを決すべきものと解するを相当とすること当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)第一二四一号同年八月一七日第二小法廷判決)から、原判決が右自判に当つて第一審判決時を基準として、被告人には少年法を適用すべきものでないとして被告人に定期刑を科し、なお罰金刑につき労役場留置の換刑処分を言渡したのは、法令の解釈を誤つたものといわなければならない。従つて論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないのであるが、本件は訴訟記録に基き直ちに判決することができるものと認められるので、刑訴四一三条但書により更に次のとおり判決する。

原判決の引用する第一審判決の認定事実を法律に照すと、被告人の判示各所為はいずれも刑法二五六条二項(罰金等臨時措置法二条三条)に該当するところ、右は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑につき同法四七条本文一〇条に従い犯情の重い判示第二の賍物故買罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、更に少年法五二条に従い、罰金刑につき刑法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内で、被告人を六月以上一年以下の懲役及び罰金二千円に処し、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条に従い主文のとおり判決する。

この裁判は裁判官全員の一致した意見によるものである。

検察官 石田富平関与

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保)

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